暑い季節の入浴は、さっぱりすることが目的になりがちなのでシャワーだけで済ませたくなるものです。季節を問わず日々の疲れは溜まります。そんな毎日の疲れをとるためには、しっかり湯船に浸かることが効果的です。そこで今回は、湯船に浸かると具体的にどのような働きが得られるのかをお伝えします。
湯船に浸かることの働き
まずは、湯船に浸かることで得られる3つの働きを見ていきましょう。
温熱による作用
湯船に浸かると体全体が温まりますが、これによって得られる働きを「温熱療法」と言います。体が温まると血管が拡張するため血行がよくなりますが、そもそも血液には、酸素や栄養分、免疫物質などを体中に運び、老廃物や疲労物質などを回収してくれる働きを担っています。つまり、血行がよくなることでこれらが活発になり、疲労回復につながるという仕組みなのです。
また、体を温めることで内臓の働きが活発になるため、自律神経を整える働きもあります。シャワーの場合、体の一部分が一時的に温まるだけですので、温熱療法としては期待できないのです。
浮力による作用
水には浮力があります。そのため、湯船に浸かると体が感じる重さが9分の1~10分の1に減り、日常的に体を支えている筋肉を休ませることになります。このような体のリラックスに伴って脳もリラックスするとされており、心身ともに休ませることができるのです。
静水圧による作用
湯船に浸かりますと、体には適度な水圧がかかります。これを「静水圧作用」と言い、優しく内臓が刺激され、マッサージに似た働きがあるとされています。また、水圧によって血液が心臓に向かって押し戻されるため血液の循環がよくなり、むくみ解消に働きがあります。
さらに、腹部に水圧がかかると横隔膜が押し上げられて肺の容量が小さくなり、その際、肺は空気をより多く取り膨らもうとしますので、結果として心肺機能の向上も期待できるのです。
湯船に浸かる際のポイント
湯船に浸かることで、シャワーでは得られないさまざまな働きがあることをお伝えしましたが、より疲労回復につながる入浴方法をご紹介していきましょう。
湯温に気を付ける
お湯の温度によって、体への働きにも違いがあります。41℃以上にすると交感神経が活発になり、37~40℃では副交感神経が優先されます。そのため、朝風呂でシャキっと目を覚ましたいのであれば熱めのお湯、夜にゆっくりと1日の疲れをとりたいのであればぬるめのお湯がおすすめです。
半身浴よりも全身浴
半身浴の場合、お湯に浸かるメリットである浮力や静水圧の作用が十分に得られませんので、しっかり肩まで浸かる全身浴がおすすめです。ただし、体への負担を考慮して、かけ湯で体を慣らしてから入るようにしましょう。全身浴で息苦しくなるような場合には半身浴にするなど、体調によって臨機応変に切り替えることも大切です。
入浴時間に気を付ける
いくら血行がよくなるからと言っても、体に負担をかけるような長風呂は厳禁です。入浴時間は10~15分を目安に、顔や額が汗ばむくらいにしておきましょう。もし息苦しいと感じた場合には、交感神経が活発になっている可能性があるため、すぐに浴槽から出て休むようにしてください。
入浴剤を活用する
好きな香りに包まれたお風呂は、それだけでもリラックス効果がありますが、実用面を重視して選ぶのもひとつの方法です。例えば、「硫酸ナトリウム」入りの入浴剤は血流アップと疲労物質の除去する働きがあるため、徹底的に疲労回復を求める方にはおすすめです。また、炭酸系の入浴剤も血管を広げる働きがありますので、上手に活用してみるとよいでしょう。
湯冷めに注意する
全身浴でしっかり温まったあとは、思い切り涼みたくなるもの。のぼせてしまったとき以外はエアコンや扇風機を使って体を冷やすのは厳禁です。タオルで早めに体の水分を取り除いて体を冷やさないようにしませんと、湯船に浸かった効果がなくなってしまいます。
ケース別おすすめの入浴法
最後に、ケース別におすすめの入浴方法をお伝えしていきましょう。
まず、ストレスやイライラを解消したい場合。夏場なら38℃、冬場なら40℃を目安にして10分以上湯船に浸かると気分を落ち着けてくれます。また、今日はぐっすり寝たいという場合は、布団に入る2時間前を目安に、ぬるめのお湯でゆっくり入浴するとより良い効果が期待できます。
足のむくみが気になる場合には、水圧でマッサージ効果を得るため、湯船のお湯の量を多めして長めの入浴をしてみましょう。また、肌の乾燥が気になる場合には保湿作用の高い入浴剤を使い、ぬるめのお湯にゆっくり浸かりましょう。その際体をゴシゴシと擦るのは禁物です。
まとめ
今回は、湯船に浸かることで得られるさまざまな作用についてお伝えしました。ぬるめのお湯に10~15分、肩までしっかり浸かると血行がよくなり、疲労回復に働きが大きいことをおわかりいただけたかと思います。今日の疲れを明日に持ち越さないためにも、湯船に浸かることをどうぞ意識してみてください。