年齢を重ねますと、腰が曲がって杖が必要になることもあります。加齢により足腰が弱まってくるのはいたしかたないことですが、できればシャキッと立てる若々しい体を維持したいものです。そこで今回は、腰が曲がる原因について解説します。原因を知ることで、できる限り腰が曲がらないための対策を考えてみましょう。
加齢によって腰が曲がる原因は3つ
加齢によって腰が曲がってしまう主な原因は、骨、筋、神経の3つと言われています。これらの箇所にどのような変化が生じるのか、順番に確認していきましょう。
骨の変化
1つ目の原因は骨によるものです。本来、背骨は緩やかなS字カーブを描き、まるで積み木のように並んでいるものです。しかし、猫背の状態が長く続きますと、次第に背骨全体に歪みが生じてきます。日頃の姿勢の積み重ねが、腰が曲がってしまう原因のひとつなのです。
さらに、年齢を重ねますと、骨がもろくなってしまう「骨粗しょう症」が猫背に拍車をかけます。そして、椎体の前方部分がつぶれ、悪い姿勢によってもろくなった骨が圧迫されて圧迫骨折を発症します。これを放置しますと、どんどん腰が曲がるという仕組みです。
そして、そもそも骨そのものは、自ら古い骨を壊しては再生させる新陳代謝を行っているものです。しかし女性の場合、閉経を境に骨の形成を促すエストロゲンが欠乏します。エストロゲンが少なくなりますと、骨を再生するスピードよりも壊すスピードのほうが速くなり、その結果骨密度が低くなってしまうのです。
筋の変化
2つ目の原因は筋によるものです。人間の体は筋力が骨を支えることで立っていられます。その直立の姿勢を保つための筋力を「抗重力筋」といい、文字通り「重力」に「抗う」筋力の総称です。脊柱起立筋、広背筋、腹直筋、腸腰筋、大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋と七つの筋力を指します。これら筋抗重力筋の衰えによって、体をまっすぐに保つことが困難になり猫背になってしまうのです。
神経の変化
3つ目の原因は神経によるものです。腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)による下半身の痺れは、腰を曲げることで軽減されるため、痛みを和らげるために自然と腰を曲げるようになります。それが習慣になってしまうと拘縮(こうしゅく)が起こり、常に腰が曲がった状態になるということなのです。
拘縮とは、関節部を包む関節包や関節包以外の関節を構成する血管や筋組織、神経組織などの軟部組織が変化して、可動域制限を起こした状態のことです。簡単に言いますと、長い時間体を動かさないことが原因で関節が硬くなり、筋肉の持続的な収縮が起きて動きが悪くなる状態を指します。
腰の曲がりを予防する方法
加齢によって腰が曲がる原因を確認したところで、次は腰の曲がりを予防する方法を見ていきましょう。
ミネラルとカルシウムを摂取する
ミネラルには、疲労回復効果の他に、神経や筋肉機能の正常化促進効果があるといわれています。また、ご存じの通りカルシウムは骨を強化する作用が期待できます。そこで、ミネラルとカルシウムを意識して摂取するようにすることが予防につながるということです。
特に、日本の水は軟水が多いのですが、軟水はミネラル分が少ないことで知られています。そこで有効なのがミネラルウォーターです。できるだけミネラルが多い硬水を選ぶようにしましょう。そして、特に閉経前後の女性はカルシウムを十分に摂取してください。サプリメントなどを活用するのもおすすめです。
このように「圧迫骨折」の原因である「骨粗しょう症」を予防するようにしてください。圧迫骨折とは腰の椎骨が垂直方向の強い圧力などによってつぶれるという骨折症状のことです。高齢化により腰が曲がった状態は圧迫骨折を伴っていることが多いとされています。
正しい姿勢と歩き方を意識する
できるだけ正しい姿勢を保つようにするのも予防のひとつです。また、正しい歩き方を意識するだけでも予防につながります。歩く際には、腕を左右平行にやや後ろに振るようにしましょう。そして、おへその下に少し力を入れてください。この2点を意識するだけで重心が前に移動しやすくなり、自然に姿勢もよくなってきます。
腹筋を鍛える
腹筋を鍛えることも腰の曲がりを予防するには有効です。完全に上半身を起こす必要はなく、お腹にグッと力を入れ、おへその部分を覗き込むようにするだけでも効果があります。毎日でなくてもよいですので、週に2~3回を目安に続けてみてください。なお、腰痛がある場合は悪化する可能性がありますので、腹筋運動は控えるようにしましょう。
定期的な検査と治療
骨粗しょう症によって、一度でも圧迫骨折を起こしてしまいますと、その変形を戻すことはほぼ不可能です。また、そもそも骨粗しょう症は全体的に骨がもろくなるもので、体のあらゆる箇所が骨折しやすくなります。最悪のケースでは、くしゃみをして骨折することもあるのです。そのため、早めの検査を心がけるようにしましょう。
特に、女性は閉経後の骨粗しょう症のリスクが大きいため、定期的に骨量を測りつつ、必要に応じて治療を受けるようにしてください。
まとめ
今回は、加齢によって腰が曲がる原因と、その予防についてお伝えしました。加齢自体は仕方ないことですが、腰が曲がってしまうという症状は日頃の努力で十分予防することができます。食生活や運動など、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。