抗生物質、ちゃんと飲んでますか?
この時期になると寒さや乾燥、喚気不十分、疲れから感染症にかかりやすくなり、
子供だけでなく、普段は病院に行かない大人も風邪をひくことが多いのではないでしょうか。
感染症にかかった場合に処方されることが多い薬の1つに抗生物質(抗菌薬)という種類のお薬があります。
抗生物質をしっかり飲みきらないといけない理由
病院や薬局で「抗生物質はしっかり飲みきってくださいね」と言われたことはないでしょうか。
『なぜ飲みきらないといけないのか?』
それは、飲みきらないと体内の細菌を完全にやっつけきることができず、ぶり返してしまうことがあるからです。
これは更に厄介な「薬剤耐性菌」を生むきっかけを作ってしまい、
『病気の悪化』、『長期化』、『慢性化』を助長してしまいます。
薬剤耐性菌とは、突然変異により抗生物質に抵抗力を持った菌のことです。
本来、抗生物質で死滅させることができるのですが、
耐性菌に対しては、薬の効果が弱くなったり、まったく効かなくなったりしてしまいます。
途中でやめてしまうと?
病院や薬局でもらった抗生物質。こんなことはないですか?
「5日分もらったが、症状は2日で治ったからその後は飲まなかった。」
・・・なんていう経験はないでしょうか。
見た目や症状は治っていても体の中にはまだ菌が残っている、というケースは多いです。
抗生物質を飲むと、初めにその抗生物質に抵抗力のない菌がやっつけられていき、
続いて抗生物質に少し抵抗力のある菌が……という順でやっつけられていきます。
多くは抵抗力のない菌なので、2~3日程度服用すれば大抵の菌がやっつけられ、症状も治まることが多いです。
しかし突然変異で抵抗力を持った菌などは、5日や7日と続けて飲まないとやっつけられない場合があります。
なので、抗生物質を飲むのを止めてしまうと、生き残った抵抗力の強い菌が大量に増殖して、
抗生物質が効きにくい「治りにくく長引く風邪」になってしまいます。
抗生剤を飲むのをサボり、自分で抵抗力の強い菌を育ててしまわないようにしましょう。
抗菌薬はむやみに飲まない方がいい?
昔は風邪をひけば、すぐに「抗生剤」が処方されていました。
患者さんの方も「風邪なのに抗生剤が出てないなんて、なんだか不安・・・。」
「抗生剤出さないなんてあの医者は治療する気あるのか?」と不満をいう人も。
なので、たいした風邪でもないのにお医者さんもしぶしぶ処方していたような状態でした。
実は、このような状態は今でも散見されるケースでもあります。
抗生剤を不適切に数千人、数万人に対して使うと耐性菌を生み出す温床になりかねません。
今では、薬剤耐性菌が日本だけでなく世界中で増えています。
耐性菌の出現により、細菌に対抗できる抗生剤も減ってきてしまいました。
新たな抗菌薬の開発も追いつかず、研究開発費の問題で抗生剤も減少傾向(*1)にあり、大きな問題となっています。
そのため、日本でも抗菌薬適正使用について議論されました。
その結果、適正に感染症診断(細菌検査や確定症状の診断)を行い、
その感染症に対して抗菌薬が本当に必要な場合にのみ、適正な「抗菌薬」を選択し、適正な「量」で適正な「期間」治療を行うことにしました。
これにより、不必要な抗生剤の処方を抑えることで十数年前よりも検査で耐性菌が検出されることが少なくなっています。
*1:抗生剤の開発が減少傾向にあるのは、単純に多剤耐性を持った細菌をやっつける
抗生剤の開発が困難ということに加え、製薬会社の研究費に割ける資金の減少や、
抗生剤はそもそも1週間程度しか処方されないので、数十年飲み続ける高血圧や
糖尿病などの薬と比較しても売上高は低く、製薬会社も研究・製造したがらない
という背景・事情もあります。
もし飲み忘れてしまったら?
飲み忘れに気づいた場合は、気付いた時点で1回分服用していただくことが多いですが、次の服用時間がせまっている場合は飲まないこともあります。
また、薬によっては食前じゃないと効かなったり、飲み合わせが悪く効果が薄くなったりする抗生物質もあります。
飲み忘れた時の対処法は薬をもらった病院や薬局に相談してください。
絶対に飲みきらないとダメなの?
副作用が出る場合は中止することもあります。薬が合わなくてアレルギーで蕁麻疹出る場合などは、すぐに中止して病院に行きましょう。
抗生物質の副作用は、他の薬と比べて下痢の症状が多く現れます。
抗生物質は体の中にいる悪い菌だけでなく、良い腸内細菌などもやっつけてしまうことがあり、
その結果腸内細菌のバランスが崩れ、下痢を起こしたりします。
少し緩くなる程度であれば飲みきった方が良いのですが、
水のような下痢や1日に4、5回以上トイレにいかないといけない状態が起こるようであれば中止して処方医に相談してみてください。
まとめ
今後は細菌も進化していき、今ある抗生物質がまったく効かなくなる、という未来が考えられています。そんな危険性を減らすために私たちにできる事は、最後までお薬をしっかりと飲み切ることです。
抗生物質によって飲み方や効き方もそれぞれ違いますし、菌の種類や症状によっては同じ薬でも有効な回数や日数なども違ってきますので、用法用量を正しく守って飲むようにしましょう。